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櫻井の居る日、二人分の食費は奴持ちである。これは櫻井から言い出した同居条件であり、こちらとしても不満はない。
奴の居ない時は自分で飯を用意するが、奴は数日の出張ならば保存食まで置いていく。それも、ご丁寧に保存容器に日付を入れて。
しかし、今回は数日の出張ではない。数日分の保存食は相変わらずだが、これを見越してカップ麺を買い込んできたのにはやや引いた。こちらとて良い大人である。健康的とは言わないまでも、料理は出来る。他人に出せるかは別として、だが。
櫻井の作った保存食を食べ尽くした頃、メニューは卵ともやしで構成され始めた。安く栄養価もあり、火を通さなくても食える食材。それはとても便利である。
櫻井が出張に出てから一週間した日、低気圧の影響で天気は乱れた。電車はダイヤが乱れ、バス停によっては暴風で倒れている。前輪が金属の柵にはめられていない自転車は、どれもこれも暴風で見事に倒れている。あちこちで軽い物は空を舞い、風にあおられやすいものは倒れた。
暴風で体力を奪われながら帰宅した日、玄関脇のスペースに植えた木が倒れていた。暴風に耐えられなかったのだと考えつつ、処理の仕方も思い付かないので放置して家に入る。
暴風は夜半もおさまらず、唸るような音が延々と聞こえてきた。予報によれば天候は回復するそうだが、にわかに信じがたい。
天候の回復を期待して就寝。唸るような音のせいか、倦怠感を纏ったまま目覚ましを止める。相変わらず唸るような音が聞こえたが、いざ外に出てみれば穏やかな日だった。
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