第1話

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思考するより先に、足は木の方向へと向きを変えた。呼び寄せられるように身体が勝手に動く。 柔らかい地面を踏みしめるのは、なんだかとても久しぶりな気がする。土の感触に足裏が刺激される。 視界に入る木がどんどん大きくなっていくのに、誰の姿も見えない。あの裏側にいるのだろう。 桜の木だろうか。桃色の花を満開にさせ、はらはらと欠片を落としている。 なるべく足元にある花を踏んでしまわないように歩いた。綺麗なものは好きだ。 木を目の前にして、どうしてか裏側に周るのを躊躇した。この気持ちは何なのだろう。 浮かんだ疑問を受け流し、足を一歩踏み出す。
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