第1話

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今日は満月だ。空がほんのり明るくて、街灯のない場所でも少し先が見通せる。 元々人型の視力は人間の何倍もいい。何の苦労もなく、約束していた場所まで辿り着いた。 地面に腰を下ろすと、草が風で揺れる音が大きくなった。 ここに一人でいると、花火と初めて会った時のことを鮮明に思い出す。 俺はあの日から、少しでも自分の感情を知れたのだろうか。 花火と知り合ってから、人を大切に思う気持ちを知った。花火のことをよく心配するようになった。 特定の誰かのことで頭の中が埋め尽くされるなんて、今までの長い時間の中で一度も経験したことがない。 確実に感情の幅は広がってきている。 それでもこれが人間と同じ【愛している】なのかはやっぱり分からない。
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