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そう、6月1日は祝日になった。大手企業なんてあと5日間、ブロンズウィークなる呼び名で休暇にするらしい。けどこれじゃあまるで強制発情ウイークだ。
何が少子化対策。ふざけんな。
東京オリンピックの年に生まれた私にすれば、ブロンズ色はゴールデン、シルバー、に続けたメダルの色の、負の遺産。
納得してない私をよそに、夫はネクタイを緩める。
「ねえ、そんな気分じゃ…、私はもっと」
夫はネクタイで私を後ろ手に縛った。
「何してるの?え?」
「結構楽しめるらしいけど?」
何が「恋の日」だ。
いっそセックス奨励記念の日って名前の方が合点が行く。互いの性癖もろ出しの。
「あれ?気分上がらない?」
夫は慌ててアプリを立ち上げ、マニュアルを検索している。
泣けてきた。ロボットみたいな悪趣味男。
なんでよりによってこんな男と強制結婚させられたんだ。
「あー。やっぱ無理やりは駄目なんだって。ごめんごめん」
ネクタイがほどかれた瞬間、もう外に飛び出していた。この世の中どうなってんの!なんでこんな酷い目に!
ところが夫から逃れたと思ったのは束の間、街の中は既に異様だ。祝日ムードに地下から湧いて這い出してきた男たち、パートナーを求めおどろおどろしく蠢いている。
ヤバイよ。こんな日に手ぶらで街を歩くのは超無謀、相手を探してますと勘違いされるのがオチだ。
…と思ってる間もなくビル陰の路地に引き込まれてしまった!
「んーっ!んーっ!」
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