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「騒ぐな」
ジタバタするも口を押さえられている真横、サニーサイドストリートには男たちのデモ行進が近づいてくる模様。
コはクニのタカラだー!
タカラダー!
オンナはセイをカイホーしろー!
カイホーシロー!
ヨびサませよ、ハツジョーキー!
ハツジョーシヨー!
やだやだホント気色わる。民主主義にあやかって一様に叫ぶ彼らの瞳は死んでいる。
やがて行列が過ぎて行くと、男の手は私を解放した。
「ケホッケホッ…助けてくれたの?それとも」
「あんた、モジュール構成定義をまだ書き換えてないのか」
「モジュール…定義を?まさか」
「そうか、でもよかったな。何も知らないでよくもまあ今まで無事に。」
男は自分のヘッドホンを取り出し私に装着した。
カシャカシャ音はトランスミュージックの類いだ。夫が好んで聴いている。
「来年はベビーブームかもな」
私は答えなかった。
得体の知れない不安を払拭するために、音楽を従えたガイド音声に集中する。
(不安の概念を構成する全てのモジュールを削除しますか)
「はい」
思わず宙に向かい返事をした。データ量が多いのだろう、少し時間がかかったが、やがて気分が落ち着いてきた。
「恋の日だなんて設定が、大げさよね。」
世の中騒ぎ過ぎてる。それだけ。
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