7人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
それに悪感情を手軽に削除した快適な生活。
なーんてうたうけど、このアプリは「削除依存症」なる人を生み始めているそうじゃないか。
廃人の山を作るのも、政府の思惑なわけ?
「そういや恋の日だっけ?今日みたいな日は一人だとどこにいても危ういよなあ」
「男の人でもそう?」
「あからさまに発情した女なんて狂気。今日一日付き合ってよ、人助けと思って」
まあねえ。私も家に帰ったところで待っているのはアレ。
「いいよ。でも変なことしないでよね」
「もちろん。恋の日に強制された恋なんて、俺だってごめんだし」
かくして利害一致した私たちは、日の当たる通りに戻った。
デモ行進の去ったサニーサイドストリート、手を繋いだカップルがちらほら散歩してたりして一見のどかな休日。
でもアパレルショップのトルソーかと思ったらリアル店員さんだし、改めて見るとまるで精巧なアンドロイドばりに働く人間たちの多いこと!
「あの人ら、何の感情を削除したんだろな」
やっぱり削除したのか、だとしたら少なくとも不平不満を、みたいな?
もしかしたらモジュール構成コントローラに依存していない人間を、探す方が難しいかもしれない。
「え?何すんの!」
「バカもっとくっついてろよ」
ふいに肩を抱き寄せられてムッとしてたら、パートナー探しに取り憑かれた一人の男が舌打ちしてすれ違っていった。気を抜けない。
「で、今日は?彼氏とケンカでもしたわけ?」
最初のコメントを投稿しよう!