episode 3

4/12
26人が本棚に入れています
本棚に追加
/204ページ
『もしかして、好きな人の話なんでしょー!』  脳裏に蘇る咲良の言葉。  まさか、なんて思いたい。あり得ないだろうって笑い飛ばしたい。でも、裕介はきっと本気だ。 「よかった、誰もいない」  教室前。祐介が言って中に入っていく。  続けて俺は入ろうと一歩を踏み出して、固まってしまった。なぜか緊張して動けない。  面接かよ! なんて心でつっこんでみるも、滑稽だ。 「どうしたの?」  祐介に不審がられる。  首を傾げる裕介の向こう。窓の外は雨が降っている。薄暗い教室。  全ての席が空いているというのに、律儀に自分の席に座った裕介。俺はその隣に座る。 「それで?」  一向に話そうとしない裕介を促す。  話があると言っておいて、照れながら悩まれても困る。俺だって緊張するし、ささっと言って欲しい。  俺は鞄に入っていたミネラルウォーターのペットボトルを取り出す。さすがにもう温くなっていた。
/204ページ

最初のコメントを投稿しよう!