メガロポリスの鮫

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 日本帝国には、米が提供した核発電所の技術はあるが、核爆弾を作る技術はあるが、日米講和の延長で一切の核兵器技術は放棄しているはずだ。まあ、そんな額面を信じるほど西条は純情ではないが、少なくとも、CIAが本気になって潰しにかからねばならないほどの段階にないことは間違いないのだ。  さて・・どこのどいつが、役に立つのか立たないのか分からん核爆弾なんかを欲しがっているのか。まあ、そんなのは詮索しても仕方がない。とにかく、それで銭になるのだから西条には文句は無い。  西条恵は、印象として幅が広い。頭、顔も、縦より横の方が広い感じがする。それに見合った薄い唇と広い口、切れ長なのだが、どこか爬虫類的な隙の無い目。首から下も太い。特別製のプロテインを使っても居るからだが、手も足も肉が太い。しかし、ボディビルダーとは違う。どこからみても実践向き格闘家の実戦的な肉体。実際、職業を聞かれたら、面倒くさいのも含めて、プロレスラーだと答える。どこの団体かとまではあまり聞かれない。そんなときは北米のあまり知られていない団体の名前を教える。とにかく、その身のこなしも含めて、どこか陸に上がった鮫を思わせる。短く切った髪で服装を覗けば、この国では、どこから見ても日系の軍人だった。  なんだか、どこでどうなってなのか、西条はアメコミヒーローのTシャツを着るのが趣味だったのである。はちきれんばかりの肉に、Sの文字が映える。どうも”西条のS”とでも認識しているのだろうか。まあ、別の時にはあの蝙蝠の紋章とかもある。他にも・・・まあ、それはどうでもいいか。  羽田空港に降下を始めた機体の窓、上空からエド湾を見ると、幾つもの四角いブロックが見えた。上空からは、さいころのようだが、実際は一辺が百mはあるはずだ。ついに建設の始まったエドメガロポリスの建物の一部。海底に土台を打ち込み、海中階、そして海上階になる。戦前から在る昔からの家々を買収して巨大なビルと作るというのが、とにかく手間がかかるとさじを投げた不動産会社と建設会社が、エド湾の中に建物群をぶったてることにしたのだ。その案に、日本帝国政府も乗った。これが完成すれば、江戸市は旧市街、メガロポリスのベッドタウンに成り下がるのだろう。いずれ、羽田もメガロポリスの一部になっていくのだろう。
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