メガロポリスの鮫

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 ヤクザどもの目的は不明だ。だが、そんなのは、関係ない。西条としては、それが物騒な目的に使われる前に、その核弾を回収すれば良いだけ。  ”もしもし、東明会のみなさん、あなたがたのところに、核弾はありませんか?それを返して頂戴”と小僧の使いをすればいいだけ。もちろん、現実はそんな生易しい話ではないのはもちろんだが、やることは、まあ、そういうことだ。もし、困難でも、あと一週間ほど使わせなくても、西条の勝ちになるらしい。なんちうか、この核弾には賞味期限があるらしく、あと一週間を超えると、核爆発を起こさなくなるらしい。それまでの間、それが使われないように仕向ければいいのだが、西条という人間が、それで満足するはずも無い。  「ちょいと聞きたいのだがな、にいさん」西条は、彼なりに易しく言った。  「う、うむ、な、なんでえ」  「おたくの組で、フィリピンからのブツを扱っている人間を探しているのだが、教えてくれないかな」  「さ、サツかよ。れ、令状は、どこだよ。いきなり、無茶しやがって」  東明会の下部組織の事務所での話だ。もっとも、今、この瞬間、事務所に何時人間は、目の前の”にいさん”を除いて全員気絶している。あるいは、命の危険にある人間が居るかもしれないが、どうしようもない。目の前の鮫のような男は、旋風だった。問答無用、事務所に居た四人の人間は、一瞬で床に昏倒したのだ。  ぱぎょ・・男のこぶし一つで鼻が潰れた。  「時間はあるが、面倒なんだ。聞いたことだけに答えてくれよ」  「そんなこと、聞いてどうする」  ぱき・・「うげ」乾いた音をしてヤクザの小指の骨が簡単に折れた。手の甲のほうに、ちょいと曲げられたからだ。  「いわかなったか。兄さんの考えることじゃねえよ。もう一度聞く。東明会でフィリピンのブツを扱っているのは誰だい?」  「言ったら、俺が殺される・・」  「ここで死んでも、いいんだぜ」  「わかった、わかったから、その手を緩めてくれ、痛くて、考えがまとまらねえ」  「言うだけなんだ、言えよ。俺が手を緩めたところで、ドスでブスって、健さん映画みたいな真似をしようなんて考えるな。俺は、プロだぜ。目を潰される前にいいな。それともキンタマのほうがいいか?」
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