プロローグ

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プロローグ

「知ってる?銃ってね、細い出口から鉛の玉が飛び出て人を殺すんだって」 興奮を隠しきれない顔で友人はそう言った。 僕が、へえそうなんだ、知らなかった、と言うと友人はさらに顔を赤くして詰め寄り、目を真ん丸に見開きながら鉛の弾を吐き出す道具について語り続けた。 僕は嘘をついた。 少なくとも目の前で鼻息を荒くしている友人よりも利口なつもりだからだ。 彼はどうやってその存在を知ったのだろう。一般人が使用するコモンズネットワーク上には武器に関する映像、画像、構造など、一切の情報が掲載されていないはずだというのに。 率直に疑問を投げ掛けると、父親が内緒で教えてくれたんだ、と目を細めてにんまりと得意気に囁いた。聖域のイデオロギーに背いた彼の父親が裁かれないことを祈る。 ところで、このクラスメートはなんて名前だったっけ。 9年通い続けたキャンパスも、クラスルームも、僕にとっては冴え冴えと白く聳え立つ監獄だった。もしくは、精神病院か宗教団体と言い表してもいい。 どれも僕にとっては歴史の産物でしかないため、ただの知識として脳に蓄積された言葉たちだが、言い得て妙な筈だ。 毎日同じ時間に同じ建物に入り、同じ部屋に置かれた同じ椅子に座る。じわじわと与えられ続ける情報をどうにか耳や目で処理して、このキャンパスと同じように心を白へと同調させていく。
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