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始まりは我らが魔王“ハーグリーブズ”の一言だった。
「何かこう、家庭の味…っていうか、庶民の味?人間とかエルフの食べ物が食べたいな…」
魔王城の食堂風広間に集った異形の側近全員が顔を見合わせ、一番端に座ってる俺事、
元ゴブリン突撃団長。現魔族&怪物混成軍団近衛団長(肩書長くて大変失礼)
通称“ゴブ軍曹”の方を向きやがる。
“団長”なんて聞こえはいいが、ただの“使いっぱしり”と大差ない。
およそ“悪い奴”に見えねぇ、涼し気な顔立ちの魔王がこちらに視線を移す。困った事に
なりやがった…とりあえずの返答を返そう。
「魔王、そう言いますけど、今日用意した食事も部下が一生懸命揃えて、
料理長の“サラマンダさん”が自身の炎でイイ感じに焦がした“焦がし料理”の数々でっせ?
そりゃ、確かに見た目は黒いですけどよ…結構おいしいっすよ。ホラ!」
目の前の真っ黒鶏肉を頬張ってみせる。うん、言い焼け具合。骨もパリッとして最高やね!
後でサラマンダさんにお礼を言っておこう。
そんな俺を見て、魔王は悲しそうに目を伏せた。あれっ?逆効果か?これ?
「そうじゃなくて、こう何ていうかな。我々の食感じゃなくて、もっと人間っぽい、
流行りの“異世界ジャンルの食堂系”に出てきそうな奴がいいな。商店ギルドのまかない丼
とか、ドワーフの石窯焼き肉とか、エルフの作ったハチミツパン的なね。そういうのがいい。」
「えっ?異世界ジャンル?飯って何すか?てか異世界って何の話?別世界?…」
「確かにハーグリーブズ様の言う事も正しい。戦が終わり、平和な時代になって、早数年…
ある程度の交流があるとは言え、それも最低限レベルのみ。ここらで多岐に渡る
一大文化交流を促してみてはどうかな?ゴブ軍曹?」
俺の疑問をよそに、魔王の宰相である“邪神ガタノゾンア”が魚介類剥き出し軟体特徴の
触手を震わせながら意見を出し、
加えて隣にいた財政管理大臣の怪獣“ファーブニ”が補足する。
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