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「軍曹、話は上手くまとまりやした。3日後には魔王城へ来るそうです。」
そう言って、歴戦の傷に笑顔を綻ばせたのは、俺の腹心の部下、ゴブリンの“ガンス”だ。
戦役時代から共に戦ってきた。顔つきは凄いが、仲間や敵の捕虜に優しい配慮が
出来る奴である。だからこそ使節団の代表として抜擢した。
人選、いや獣選(じゅうせん)は成功だったようだ。厄介事が一つ片付いた事に安心する。後は上の連中なり、料理長のサラマンダさんに任せればいい。ガンスにねぎらいの言葉を
かける。
「ご苦労様だ、ガンス。向こうの連中、人間達の反応はどうだった?ビビッてなかったか?」
俺の言葉にガンスではなく、隣からひょっこり顔を出した蛇型モンスター
(と言っても、頭に蛇の皮被ってるだけの半獣半人タイプ)
“ラミアン”が尖った歯を見せて笑う。
「もう、何か全然!こっちの領土と、一番近い人間達の住処に行ったっていうのも
あるのかな?
“3日だけ…時間を下さい…”
とか言って、トントン拍子で進んだよー!」
「そうか!良かった。とにかく休め!そして飲め!ガッハハー!」
ご機嫌で秘蔵の酒を取り出し、二匹に振る舞う。その日は大いに酔っぱらった俺達であった…
そして3日後…
魔王城の前で馬車が止まる。豪華というより、やけに質素なデザインだ。黒い車に黒い馬…
幌も真っ黒。最近の人間界の流行りなのか?あれではまるで“死に装束”…?
こちらも歓迎の一団を揃えていたのだが、全員が一様に首を傾げている。そして降りてきたのは…
先程の姫の様子に戻る。
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