第一話: ミステリ的な

1/2
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ

第一話: ミステリ的な

人生八十年とか言うけれど。 後半四十年は衰えてゆく体に嘆きながら送る余生であり、前半四十年のそのまた後半二十年は仕事漬け。 かといって生まれてから十年は物心と常識を育てるための育成期間だ。 つまり人生の中で何にも縛られず楽しめるのはこの青春の十代だけなのではないか。 青春を謳歌した者が人生を謳歌する。 青春が豊かな者は人生が豊かとなる。 青春こそが人生のすべてなのだ! 「そう将来に悲観することもないと思うけどね。 楽しい仕事だってあるだろうし。結婚したら幸せだと思うよ」 私の青春についての熱弁を歯牙にもかけず、友人である一ノ瀬ふうりは淡々と目の前の原稿用紙を埋めてゆく。 先程まで騒がしかった教室でふうりが書いているこれは将来の夢作文とかいう、可能性の塊であるはずの高校生一年生が明るい将来に胸を弾ませてもらうために自らの将来の夢を理由と供に原稿用紙三枚で提出しろとかいうバカみたいな課題である。 前述のように人生のすべてが青春に詰まっていると信じている私は何の抵抗もなくずっと高校生でいたいと書いたが居残り再提出をくらった。 もう一回出したけど。 一方、今目の前で作文を書いている親友のふうりは将来の夢なんてないからと一回目は原稿用紙に名前だけを書いて三枚目の最後の行に 「私の可能性はこの原稿用紙のマスの数より多い」 と書いて提出し、私と同じく再提出。 今度は一回目の作文 (?)の解説を書いて提出するらしい。 おそらくまた再提出をくらうだろう。 「ふうり、部活どうする?」 私がこの春入学した創元館高校は多彩な部活動で有名な高校だ。 運動場が広いぶん多くの運動部が存在し、その影響か文化部の数も多い。 とは言え人数が少なく、廃部寸前の部も数多くあるという。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!