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「迷ってるけど文学部の予定」
「文学部? あ、さっき自己紹介でそんなこと言ってたね。どんな部活なの?」
地味なイメージだがひかりには似合いそうだ。
「さぁ? 名前通り、文学を追求する部活? 廃部寸前らしいけど。
ひかりは美術部? どうせ授業でもやるのによくやるね」
この学校では週一である芸術科目を選ぶことができ、それでクラス分けがされる。
私たちのいる七組と下駄箱川の隣の八組が美術で五、六組が書道。二階にある一組から四組が音楽だ。
「絵を描くことが好きだからね。いろいろな画法に挑戦もしてみたいし。
でもふうりが入るなら私も文学部にも入ろうかな。廃部寸前ならどうせ大した活動もないでしょ」
私がそう言うとふうりは突然手を止めて顔を上げる。
「なら先に文学部室に行っててくれない?
私、この作文まだまだかかりそうだし。終わったら私も文学部に行くから」
ふうり本人が気が付いているかは知らないが上限が原稿用紙三枚のはずなのに五枚目に突入しているあたり、すんなりと提出して終わりというわけにはいかないだろう。
なら先に行って文学部というものがどんなものか見てきてもいいかもしれない。
「暇だしりょーかい。早く仕上げなよ」
私は軋む扉を開けて廊下に出て、文学室に向かう。たしか第二部活棟にあっただろうか。
私は初めての高校生らしい活動に胸を高鳴らせ、部活棟へ歩き出した。
少し視点をひかりから離そう。
二人が通う創元館高校は、ある都会とも田舎とも言えない地方の進学校で校舎こそ真新しいものの起源を遡れば江戸時代にも名残をみることができる大変歴史のある高校である。
また、まだそこまでの意味は持たないことだが二人がいるのは1980年代初頭のことであった。
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