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椅子に座ったままウトウトしていたらしい。
目を覚ますと甘い匂いがして、ふと外を見た。
花だ。
まだ寝ぼけているのかと思った。
こんな夢はごめんだ。思いきり目をこする。
いや、これは夢じゃない。
庭一面に花が咲いている。
彼女が死んでから10年経つというのに。
私は庭へ飛び出した。
彼女がひときわ大切にしていた、ポピーの花壇。
たくさんの色の花が咲いているが、
一輪だけの白いポピーが目を引いた。
花言葉は「眠り」。私はハッとした。
根元に何か埋まっている。
堀出してみると、小さなメッセージカードだ。
土を払って涙が溢れた。
次から次へと出てきて止まらない。
とめどなく出てくる涙で字が見えない。
拭いながらなんとか読み終え、
私は叫んだ。
自分が聞いたことないような声で。
ひとしきり泣き叫んだ。
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