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08:夏の準備。
お花見も終わって、またいつも通りの日々が続く。
狐さんは忙しいのか頻度が落ち、たまに現れては店内で葉巻をふかしいつの間にか消えていく。
女神サマもといヘラさんはとくに忙しいこともないのか、ちょこちょこ来る。決まって旦那さんへ使うものか、自分の美を保つものだ。
鬼さんたちが買いに来ることも少なくなって、かわりに小さな女の子(に見えるが私の倍以上生きているアヤカシである)が買いに来ることが増えた。
ヒトダマの素だったり、妖しい煙の出る機械だったり、その場の温度を下げる装置、近付いたニンゲンの心拍数をあげる装置。
……仕掛けがわかってしまうと、なんだか怖さも半減である。
「ヒトダマとか、つくれちゃうんですね」
「そうだよ。ここらのは全部僕の魔術用品でつくったものだ。これがウケがよくてね」
「お化け屋敷も案外的はずれって訳でもなかったんですね……」
ホラー好きな人がきいたら、幻滅するのではないだろうか。
「どんなものにも原理はあるからね。原因なくして結果は出ない。ニンゲンに理解できるものをカガク、そうじゃないものを心霊現象ってわけてるだけだよ」
「はあ……」
「ま、そのうちわかるさ」
九織さんも説明が面倒らしい。まあニンゲンに理解できないと前フリされているので、私もニンゲンを辞めることがあったら理解しよう。
「ところで何処がそういうスポットになるんですか?」
「えーと、山の麓に廃ホテルがあってね。そこが立地的にいいかなってこの前会議で決定したとかいってたよ」
「会議」
「全日本アヤカシ連合会だったかな。名前はよく覚えてないけどそういうものがあるんだよ」
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