07:アヤカシ花見

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 夜の山で、一緒に花見をした相手は妖怪や悪魔や女神やカミサマだ。さっきは桜の精を自称する不思議な女の子がいたし、もうここがホラースポットなのではと思う。なのに、平気である。  私はいったい、何が怖かったんだろう。 「簡単な話さ。よくわからないものは『怖い』と感じるんだよ。ただそれだけの話」  九織さんが、私の肩に手をのせた。  この人もいつもよりボディタッチが多い。もしかしたら酔っぱらっているのかもしれない。 「知ってるから、怖くない」 「そう。僕らがキミに危害を加えないとキミはもう知っている。だから怖くないんだ」 「なるほど……それはそうかもしれません」  ポイントは危害を加えるか加えないか、だろう。  九織さんと一緒にあの食人木を見に行った時、私は危害を加えられるかもしれないから──怖かったのだ。なんて臆病な話だろう。  けれど、そうだ、きっとニンゲンも他のものも、みんながそうなのだ。  もしお互いがお互いを知ろうと努力できれば、もしかしたら世界の皆は和解できるのかもしれない。……あくまで、もしかしたら、だが。 「みんなには、怖いものとか、あるんですかね」 「さあ、どうだろう。他のみんなはどうかわからないけれど、僕にはあるよ」  正確には出来たというべきか。  九織さんはそんなことを呟いた。 「キミという従業員を失うのが怖い」  思わず呆然としてしまった。     
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