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……そう、口に出したかったのだが、さすがにそれは言えなかった。
もし、私に自信が出来たなら、その時は伝えよう。
さて、待ちに待った金曜日。
酔っぱらっていながらも、今回はなんと私にはボンヤリながら記憶がある。
そう! モラクスさんに、口付けされた記憶が!
都合のよい記憶に書き換えているのではと何度か自分の記憶を疑ったが、何度思い返してもあれは素晴らしいご褒美だった。
……彼が、ちゃんと覚えているかが微妙なところだ。だいぶ酔っていたようだし、あれが覚えてないとなると結構悲しい。
「……どんな顔して会えばいいんだ……」
思い出すと顔が火照る。
私の心を読める彼が、あんなことをするわけだから、それなりにその、何かあってしたのではとやはり思ってしまう。
……のだが、奥さんがいないといっていたし、あんな感じだけど実は硬派じゃなくてああいうことをいろんな人にやってて、それゆえに奥さんがいないみたいなことだってあるかもしれない。
そんなことをぐるぐる考えている。
(期待しないで、いつも通りの対応をしよう。そしたら最悪この店員と客の立場は守れるかも)
そうだ。変に態度を改めて、彼に不快な思いをさせたらまずい。
ここはいつも通り──笑顔で……
ごーん、ごーん。
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