999人が本棚に入れています
本棚に追加
/422ページ
可愛い後輩たちが今後、その会社で少しでもよい生活をできるようにできるだけ頑張ったつもりだが、その後の彼らを私は知ることができない。
辞めるということは、そういうことだ。
私が辞めたあと、会社がどうしようと私に関係がないように、会社がどんな対応をとろうとも、もはや文句をいうこともできない。
だからこれは敗走だ。
職という人間的な生活を送る上で大事なものをとられ、毎月与えられていた賃金というものを排除されて、ついでに会社の寮に住んでいたのでそこも追い出された。
まずは住むところ。それから仕事を探さねばなるまい。
……というのに。
(やる気がおきない。もうどうでもいい)
自分のことながら困ったものだ。
私という人間は、二十八歳にもなって、自分の人生に匙を投げようとしている。
これからどうしようという展望がまったく見えてこない。
もともと前の仕事も好きでやっていたわけでもなく、ただたまたま受けた面接がうかっただけのことだ。
結局私は、人生の夢というものを考えることを先延ばしにしていただけで、何一つそういった目標と呼べるものを持っていなかった。
今も、思い浮かぶことはない。
「──?」
ふと、視界の端に奇妙なものが映った。
最初のコメントを投稿しよう!