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「お邪魔します」
大学の授業を終えたボスが俺の家にやってきた。夕飯まではまだ時間があったから、それまで二人並んでソファに座って久々にゲームなんかする。
テレビ画面を見たまま尋ねる。
「この仕事の日給いくらなんだっけ」
ボスも正面を向いたままで答える。
「八千円」
「うわ、高っ。それじゃ仕事に手は抜けないよね」
「勿論。と、それにプラス三千五百円か」
「……それは俺とボスの夕飯代だろ」
「そうだっけ?」
ボスは俺の方を向いてニッと実に無邪気な笑顔を見せた。
夕飯はボスが日給から千円足して出してくれたので、計四千五百円のなかなか豪華な夕飯を
デリバリーした。食後にボスは冷蔵庫にあったビールなんかソファに座って飲んでる。俺も一応言ってみたけど、未成年は駄目とはねつけられて、仕方なしにコーラを隣に座って飲む。まぁいいけど。前にチョイ舐めてみたウィスキーはチョーまずかったし。
なんとなくつけたテレビを見ながら、親を見送った時に思った事をボスにも言ってみる。
「特別な日だからって、息子を置いてって自分たちだけで楽しむっていうのは如何なものかと思うね」
「じゃあ特別な日にしようか、私達も」
思わずボスの顔を見ると笑っていた。さっきみたいなのじゃない、小首を傾げて誘うような
目で。俺にどうする気か問いかけるように。
言うのを忘れていたけど、ボスは女の人だ、しかも、とんでもなく綺麗な。
緩みそうな口元を無理にへの字に曲げて、言い返す。
「ボスって俺のお目付け役なんじゃなかったっけ」
俺の顔を見つめたままで、肩を俺の胸に押し当てて、言う。
「そうよ。だから、ちゃんと一晩中、君から目を離さない」
俺がボスにかなう筈なんか無かった。
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