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多分、すぐにこの目の前の人との時間で埋まっていって、あの不思議な日々のことは過去になるんだろうけど。
一緒に平行世界を旅した悠真も、今一緒いる悠真も、どちらも同じ悠真としか思えない。
「なんでそんなに泣くんだよ……」
困り果てている気の毒な悠真を見ながら、私は涙を拭いて顔を上げた。
「5月の試合、レギュラーになってね。応援しに行くから」
私の言葉に照れた悠真の右頬にえくぼが見えた。
そして、私の頭にぽんぽんと手を乗せて「おう、約束な!」と笑った。
一緒に平行世界を回っていた悠真が見たら、こんなにも素直な言葉を言えるようになった私に驚くかもしれない。
そんなことを思うと少しおかしくて。だけど、少し申し訳なくて……。
間違いなく、あの悠真と一緒にいたから、天邪鬼なことばかり言ってしまう可愛くなかった私が素直に心を開けるようになったのだから……。
だけど、以前、他の世界で大輝と別れた後に悠真が言った。
どの世界の大輝も繋がっていて、元々は同じ大輝なんだって。
その意味が今はよく分かる。
私には悠真が託した『希望』がきちんと目の前に見えるから。
私は目の前にいる悠真が好き。
【了】
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