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幼い時は、花も緑もあふれる美しく明るい国だった。
山からの水も豊富で、砂漠もここまで広がってはいなかったように思う。
城の庭が枯れたところも、花瓶が空になったところも、楽しそうな町の人達の声が途絶えたところも見たことはなかったと、占術師が口元を綻ばしている。
城下の街もにぎわっていて、砂漠に点在していた近隣の村との交流も盛んで、作物や工芸品も多く流通していた。
「皇子らが巻いている布も、今はもう無い村の特産品でな・・・残念なことに、あれを作れる者はもう居らぬ」
雨の中、手渡された夕焼け色の布を思い出す。柔く、とても美しかった。
「ああ、お前さんにも、あとで届けさせよう。たしか、王妃らのが仕舞ってあったはずじゃからの」
「・・・それは」
「使ってやっておくれ。そのほうが喜ぶはずじゃ」
そういうとくしゃりと皺を寄せて小さく笑った。
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