花ノ歌02

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「わしは生まれた時から目が見えぬ代わりのように、占術師として必要な先見(さきみ)の力を持っておってのぉ・・・物心つく頃には、この部屋で過ごすようになっておった。先代の国王や王妃も、それはそれは良くしてくれていたものじゃ。歴史が狂いすぎぬよう、予見が城下の者たちの妨げにならぬよう、わしはずっと、ここで王族の方々としか会っておらなんだよ」 「・・・お母さんや、お父さんとも?」  ゆっくりと肯いて「先代が、親のようなものかのぅ」と続けた。 「どんな小さなことであっても、迂闊に未来を知ってしまえば、その瞬間から歴史は狂い始めるじゃろう。変えようとすること、抗おうとするもの。それは決して悪いことではあるまい。もともと未来を変えるための『先見』じゃからの。わしか、もしくは他の誰かか、起こる未来を知ったうえで覚悟して変えたと云うのなら・・・それもまた『歴史』に他ならない。だがの、必ず皺寄せは来る。必ず、じゃ。当人か、当人から近しいものか・・・それは分からぬがの」  占術師の言葉に、どきりと心臓が跳ねた。  金髪の青年の、笑顔と死に顔が脳裏をよぎる。 「その皺寄せは、幸せなものでは無いやも知れぬ。・・・いや、そうでないことの方が多かろう。未来など無闇に変えるものじゃあないのじゃ。これは只人には、重過ぎるからのぅ・・・」  苦い記憶ごと飲み干すように、お茶を口に含んでふぅと息を吐きだして目を閉じた。  時間が止まったように、ふと音が消える。 「・・・占術師さん」  か細く小さい自身の声が、やけに大きく室内に響いた。     
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