1人が本棚に入れています
本棚に追加
「ええ、占術師様に御目通りできるのは王族の方々のみ。ですが占術師様は御高齢で、世話係も必要なのです。以前は王妃様がたが占術師様のお世話をなさっていたのですが、今は・・・その王妃様がたもいらっしゃらない。ですので、私のように目の見えない人間が世話係を任されているのです」
盲目では戦えませんから、と翳りを含んで笑い、先へと進みはじめた。
すぐにまた足を止めると、促すような手つきで扉に手をかけ、わたしを見る。
「どうぞ、こちらです」
少し前に出て、それから少しだけ躊躇った。先の会話で煉夏も言っていたではないか。
王族以外は会えないことになっている、と。
それに世話をされる側の王妃様がお世話をしていた人だなんて、緊張でくらくらする。
わたしは、この国の人間ですらないのに。
「・・・あの、わたし・・・」
「大丈夫ですよ。占術師様のほうから貴方を呼ばれたのですから」
「そうそう、歌乃は別格、大丈夫」
煉夏に背中を押されて一歩を踏み出す。
振り返ると、煉夏の口元が少しだけ笑っていた。
「さあ、占術師がお待ちですよ」
空科の落ち着き払った声が、わたしの緊張を少しだけ和らげてくれた。
最初のコメントを投稿しよう!