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ひとり部屋の中に入ると真っ暗で、ぱたりと扉の閉まる小さな音にもびくりと肩が跳ねる。
早くなる心臓を抑えながら、恐る恐る、垂れる布を伝って進むと、細い光が目に飛び込んできた。
この部屋の中に、もう一つ部屋を作るように布が垂れていて、その布の隙間から明かりが漏れているようだ。
・・・あの中、かな?
「そう、そうだよ」
歌乃の考えに答えるように返事が返ってきた。突然の声に、体が強張る。
この声の主が、話に出てきた『占術師様』だろう。
高齢の老人特有の、しわがれた声。それでも、時を重ねてきた分だけ温かく深みのある声。
「さぁ、入っておいで」
「・・・失礼します・・・」
緊張と高揚に跳ねる心臓を抑えながら、意を決して布に手をかけると、震える指にも軽く、視界を広げていく藍色の布。
急に溢れた光に、反射的に目蓋を閉じた。
眩しさに馴れてゆっくりと目を開けて見えたのは、ちょこんと座る小さな老人。顔を覆い隠すほど長いフードを被った占術師、この老人が。
占い師というからには、それらしい雰囲気をかもし出した部屋の作りがなされていると思ったが、意外と、そうでもなかった。
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