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「おやおや、力のことが気になるのかえ? じゃが、その話は後じゃ。その前に歌乃や、お主には知らねばならぬ事がたくさんあるんじゃよ・・・この国のこと、敵対している者達のこと、そしてもちろん、お主自身のことも・・・まぁだ時間はある。少し長くなるがの、ゆっくりと話をしてあげよう」
「・・・・・知らなきゃいけない事・・・」
「そう重く捉えんでもよい。婆の戯言に少しだけ付き合うておくれ」
知りたい、そう思った。
ここに来た意味、彼らのこと。
ここに住む人たちと、彼らと、ちゃんと関わっていく為に。
占術師が少しだけ笑った。そしてゆっくりと、悲しそうに俯いた。
「この地はのぅ、山の神に守られておったのじゃ。昔、この地の真ん中に天山という、その名の通り、天を突く程高い山々があった。その山々が、この地をいくつかの国に分けておったのじゃ」
天山はその裾を大きく長く広げ、人の住まう国、獣人の住む獣の国、鬱蒼とした植物のための国、湖と川が大半を占める魚人の住む水の国、そして天山の中腹にある人の入れない火の国。
「天山に見守られるように、それぞれの領地に、ほんに多くの種族が存在しておったよ」
人も、獣も獣人も、水辺にすむ者たちも。
争うことも、とりわけ深く関わることも無かった。
それぞれに種族が違って、生き方も考えた方も違う。ただそれだけのことだった。
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