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01.
触れたい。
触れたくない。
伝えたい。
伝えたくない。
‐―――――――――伝えない。
転職して一年半。
新卒入社の会社は二年で辞めた。
店長の機嫌は今日も悪い。
この仕事場の金曜日は、いわゆる世間の火曜日だ。
そんな中、相変わらず頓着のないトーンで響く声。
「周さん、これ明日やってもらって良いですか?」
周いろは、25歳。
警察官を目指していた私がOLになっているなんて、
あの頃の自分には知られたくないものだ。
「明日UPしますね」
資料を差し出す彼の左手に唯一光るアクセサリー。誰そ彼との、永遠の誓い。
無意識、その骨ばった手を、視線が追う。
「いつも無理言ってすみません」
優しく届く、穏やかな声色。
「大丈夫ですよー。」
彼を想う感情に、『愛しさのオプション』が標準仕様。
川の様にとめどなく、とめどなく。
流れ続ける毎日。
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