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「周さんはいつも正論を言うね」
営業会議後、店舗に戻ってきた彼は口を開いた。
先日掛け合っていた私の案が上に通ったそうだ。
店長と違って普段あまり感情を表に出さない彼だけど、
いつもより少しだけ機嫌が良い様にも思う。
「お役に立てて何よりです」
上司と部下。それが日常。それ以上は、ない。
「もしかして」は、ない。
踏み込む事を許されない領域。
私の恋はいつだって、伝える事を許さない。
私が私を、許さない。
「今度ごはん連れてって下さいね」
冗談半分、願望半分。
大人の付き合い、社交辞令。
「僕と行ってくれるんですか?」
売り言葉に、買い言葉。
彼が私の事をどうとも思っていない事は明白なのに、
どうしてこんなにも心は突き動かされるのか。
「副店長のおごりですよ」
理性という名の鉄壁。私は私に壁を作る。
決して相手に入り込まない。入らせない。
カマの掛け合い。探る言葉。
譫言に、甘えない。
「ラーメンで良い?」
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