リゾートからの手紙

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普通の船ならエンケラドゥスの外殻に落ちても、この地底海までは辿り着かなかったでしょう。バラバラになったとはいえ、こうして形を残しているのは、さすがチャイナ製です。 地元のエンケラドゥス人がいうには、彼らはマナーがあまりにも悪く、身勝手だったので、エンケラドゥスの神様の怒りをかって、間欠泉の直撃を受けたとのことです。 沈没後、200年は経っていますが、一部の動力はまだ生きているようで、船の中には明かりが見えていました。恐る恐る、窓から中を覗くとドロイド達が、物言わぬ着飾ったご婦人の世話をしていました。 きれいに整えられたその姿は、200年前の惨劇を微塵も感じることはなく、まるで今にもこちらを振り向くかのようでした。 その時が止まったかのような光景に見入っていると、若いダイバーのピョルティッカが 「・・ニッポンジンガ、イチバン、イイヒトヨネ。」 と言いました。 一瞬、えっ?と思いましたが、すぐにその意味が分かりました。 ピョルティッカは、日本製のドロイドを日本人だと勘違いしていたのです。 無理もありません、ドロイドの胸には大きく「がんばろう!にっぽん。」とステッカーがはってあるのですから。 僕は笑いながら、 「うん、そうだね。君の言うとおりだ。」 と答えました。     
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