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深度8500
「ヤマモトサン、そのあたりにしておかないと、そろそろ・・バイヤヴァイ・・ですよ」
「オケー、オケー!、わかってるって! もうちょいで、掴めそうなんだよっ!」
深度8500メートル。
ヤマモトは、光など無縁のこの世界を煌々とライトで照らしながら、深海作業艇「シンカイS4829」のアームを伸ばしていた。モニターには、小さく反射する円筒形の物体が映し出されてはいるが、熱水とメタンの屈折で、よく見えない。
加えて、ここは熱水噴出孔の密集地帯で、海洋流も早く艇を安定させておくのさえ難しい。
氷層下に打ち込んだジャイロアンカーの信号は届いてはいるが、その指示に従うとオートパイロットが乗員の安全を優先して、勝手に浮上しようとするので、今はドロイドのぎこちない漕艇に頼るしかなかった。
6本指のアームが、その円筒形の物体を鷲掴みにした瞬間、長年の相棒であるもペッパー型ドロイド・コショウの「鉄之助」が叫んだ。
「ヤマモトサンっ!・・・キマツ!」
その瞬間、激しい振動で外壁がミシミシと軋み、「シンカイS4829」は激しい熱水の噴出に巻き込まれ、艇はまるで洗濯機の中に放り込まれたようにクルクルと回り始めた。
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