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―Ⅱ―
ひと組目の伉儷は、男同士だった。
1人は酒場で酒守(さかもり)と呼ばれる給仕をしていて、1人は採石師をしている。
家はユーカリノ区にあるという。
「ユーカリノ区にある王立技能学校には、少し遠いけど時間半ばで行ける距離なんだ。採石が好きなら、休日採石して、平日は技能学校に通ったら?」
そんな提案もしてくれた。
「選別師資格を知っていますか?」
聞いてみると、採石師の方が首を傾げた。
「知っているけど、あれには向き不向きがあるって話だよ。でも、資格を取りたいなら技能学校に行けば取れるよ」
ミランダが言った。
「この子はしばらくこちらで、選別師資格を取得するための訓練をしたいのですって。それまで、こちらで預かります。結果は、選別師に受かってからでいいのではないでしょうか。ひと月ほど、準備期間として、会いに来られては?」
酒守と採石師の伉儷は頷いた。
「また週末に来るよ。一緒に過ごす時間がほしいな」
ユクトは言った。
「今日は昼から、火の宮で選別師の訓練をするんです」
「それなら、俺たちも行っていいか?」
「はい」
そういうことで、ひと組目は昼食をともに摂ることになった。
ふた組目は、50代の伉儷で、男女ともユーカリノ区の宿街で働いているのだそうだ。
「私は湯張りが主な仕事で、妻は部屋の整えが主な仕事だ。休みが多く、趣味で採石をしている」
「趣味?」
「ああ。彩石には色々あってね。名のあるサイセキを主に採取して、選別場ではなく店に直接売り込んで、高値で買い取ってもらうんだ」
「そんなこともできるんですか」
「ああ。選別場の値段は最低限なんだ。例えば最北のフェスジョア区の店では、そう気軽に彩石を取りに来られないからね、灯石類なんかは特に売れるから、値段も高くで仕入れてくれる。今度見に行くかい。ついでに、試しにうちに泊まってみるってのはどうだい」
ミランダが言った。
「そうですね。今度の休みはいつですか?」
「今日、明日、休みだ。今から一緒に来るかい」
「今日は約束があるんです」
ユクトが言うと、ミランダが提案した。
「今日の夕方、一緒に家に行って、2泊してきたらいいのじゃないかしら」
「待ってもらえるんですか?」
「もちろん。そういうことであれば、レグノリア観光をしているよ」
そう言って、50代の伉儷は部屋を出た。
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