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案内された家は、宿街から離れたところにあり、だが歩いていける場所だった。
ユクトは湯を浴びさせてもらい、部屋に案内されてよく眠った。
翌朝、朝早く起きると、食事の支度が進んでおり、座って待っていてと言われて座っていると、次々食卓に食べ物が載った。
「やあ、作りすぎじゃないかね。無理して全部食べなくてもいいからね」
夫に言われて、ユクトは頷いた。
確かに多かった。
妻も恥ずかしそうに、口に合わなかったらごめんね、と言った。
おいしくいただき、少し食べ過ぎたかなと思うほどに食べて、ひと休みすると、夫妻は早速ユクトを目的地に連れていってくれた。
そこはユーカリノ区西桟橋の通りで、夫妻は知り合いの仕入れ屋に声を掛けて、買い取りたい彩石について話してもらった。
「まず灯石類はよく売れる。1000カロンで保つのはふた月といったところだからな。フェスジョア区で売る。この辺の人は皆自分で見付けるか、選別場で買うからな。こっちは船賃とか、まあ、手間かけてるんで、通常の値段に上乗せして買ってるし、売ってる」
「つまり場所によって彩石の価値が違うんですか」
「そういうこと。サイジャクはできるだけ安く売る。サイゴクはそれなり。サイセキが一番高いね。名のあるサイセキは用途が決まってるから、価値が高いよ。名のないサイセキは、術語を余計に必要とするから、名のあるサイセキより価値が低め」
ユクトはそうなんですかと頷いて、これからはこちらに売りに来ようかなと思った。
それから、ほかの仕入れ屋や、彩石を加工する彩工師(さいくし)たちにも引き合わせてもらい、ユクトたちは川岸の食堂で昼食を摂った。
「さてと、今日はレシェルスまで遊覧しよう」
夫がそう言って、ユクトたちはのんびり進む遊覧船に乗った。
ユクトはレシェルス区の黄葉に声をあげた。
「きれいですね。こんな景色もあるんだ」
「そうだよ。渓谷まで行くとまたすごいんだ。まあ、今日は西地区の様子を見て回ろう」
西地区の森は奥に行くほど深く、ユクトは怖れを感じるほどだった。
「ユーカリノの森とは違いますね」
「ああ、まるで違う。だがこれもアルシュファイドなんだ」
しばらく森を見て回り、それからまた遊覧船に乗ってユーカリノ区に戻った。
夫妻の家に戻ると、妻はまた腕を振るって料理を並べた。
翌朝、夫妻に送られて馬車に乗り、ユクトは施設に戻った。
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