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休日
ユクトは急ぎ足で歩いていた。
廊下は走ってはいけないので、どんなに急いでいてもこれが限界だ。
今日は半の日。
しかも最後の講義が終わったところだ。
これから、友人たちとユーカリノの我が家へ…あの50代の伉儷、ミット・ビルガとメイニア・ビルガの家に泊まりに行く。
ユクトは自室の机の上に教科書と帳面と筆箱を置いて、まとめていた荷物を取り上げた。
部屋の鍵を閉めて、宿舎管理の帳面に、部屋番号と自分の名と行く先と連絡先を書いた。
あれから、アルシュファイド国籍を取得して、保護責任者としてミットの名を登録し、自宅登録もビルガ家にした。
離れて暮らしてはいるが、ミットとメイニアがユクトの養い親だ。
王城前客車寄せの集合場所に一番に着いて、周りを見回す。
友人たちの姿はない。
水を買っていると、ラフィが現れ、ティルとジェンは?と聞いてきた。
「まだみたいだ。間に合うかな」
「間に合わなかったら次があるだろ。なんせ週末のユーカリノだ」
ユクトたちもそうだが、泊まりがけで彩石を採りに行く者が多い。
出発予定の馬車が来た頃、ようやくティルとジェンが駆け付けた。
馬車に乗り込みながら、なんとか間に合ったな!とジェンが言う。
荷物を頭の上の棚に置き、奥から座る。
乗客6人が座って時間が来ると、発車します!と声がして馬車が動き出した。
「なあ、彩石発動館てどんなとこ?」
今回は、採石以外にも、ミットが彩石発動館まで連れて行ってくれることになっているのだ。
「んー、静かなとこかな。ただ見せてくれるサイセキはすごかった」
「静かなとこで、すごいサイセキ?」
ユクトは笑って言った。
「俺、サイセキが発動してるとこなんて、初めて見たから。余計に感動したんだろうな。期待させすぎてたらごめん」
「謝んなよ!ユーカリノって採石しかしに行かなかったから、そういうとこがあるって初めて知って楽しみ!」
ラフィが言って、ティルとジェンも笑った。
「とにかく行って、見ようぜ!」
そして2時間の馬車旅のあと、ビルガ家に行って夕食をごちそうしてもらう。
「うちは風呂場が狭いから、宿街の方に入りに行こう。ランプ亭っていうのが、彩石湯っていうのを張ってて、評判がいいんだ」
ミットがそう言って誘い、全員でランプ亭という宿に入って湯に浸かった。
この湯は評判通りで、いい気分でビルガ家に戻り、ぐっすり眠った。
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