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「12歳です」
「どこから来た?」
「チタです」
「どうしてアルシュファイドに来た?」
「彩石を拾えば生活できると聞いて…あの、なんでそんなこと聞くんですか?」
「アルシュファイドでは君の年齢は保護されるべきだからだよ」
「ほご?」
「そ。守られるべき年齢だってこと。例えば、君、家はどこだ?」
「ありません」
「この宿に泊まって過ごしてたのか」
「はい」
そうか、とスティンは言って、息を吸い込んだ。
「君には選択肢がみっつある。ひとつ、養い親を探す。探すといっても任せておけばいい。ふたつ、王立技能学校に入る。そこには宿舎があるから、卒業するまで定住できる。みっつ、士官学校に入る。ここも宿舎があるから卒業するまで定住できるし、騎士になれば黒檀塔で生活できる。どうする?」
ユクトは突然の選択に眉根を寄せた。
「今のままじゃいけませんか?」
「いけないね!第一、君、国籍はどうなってる?チタに帰るつもりならいいが、このままアルシュファイドで暮らしていくなら、国民として登録すべきだ」
ユクトは迷った。
チタに帰っても何もないのだ。
だがアルシュファイド国民になる気にもなれなかった。
「俺は…チタ国民でいいです」
「まあ、それも自由だけどね、保護されるべきことに違いはない。ひと晩よく考えて答えを出すといい。俺たちもこの宿に泊まってるから。ああ、念のために言っとくと、逃げても追い掛けるぞ」
ユクトは言われたことをよく考えてみた。
「それは…どれも選ばなかったら、俺にこの国を出てけってことですか?」
「出ていかれると困るなあ…どれも選びたくないのか?」
ユクトにはすぐには決められなかった。
「判りません…」
「じゃあ、とにかく今夜から考えてみるんだな。明日も採石に行くのか?」
「はい。毎日行ってます」
「じゃあ、暁(ぎょう)の日にちょっと休んで、レグノリアまで施設を見に行こう。きっと参考になるから」
今日は半(はん)の日だ。
藁(こう)と円(えん)の日は週末だから施設が休みなのだろう。
アルシュファイド王国は、暁、朔(さく)、繊(せん)、朏(ひ)、半、藁、円の1週間のうち、週末の藁と円の日は休日としているのだ。
だから開いている選別場も少ない。
「分かりました、考えてみます」
ユクトはそう言って、食事の残りを食べ終えると、あてがわれた部屋に戻っていった。
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