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新たなつながり
―Ⅰ―
養い親として登録している者たちは少なくなかった。
ひと月ごとに更新しているので、事情が変わって預かれなくなったということはないはずだ、と施設長は言った。
「ユーカリノ区がいいのなら、こちらの伉儷がいいのじゃないかしら。2人とも職業が採石師ですって」
取り敢えず見に来ただけだからと言って、スティンは施設のなかをユクトに見せると、未成年者保護施設を出た。
ここでは、新たな家族ができるまで、未成年者を一時的に預かることもあるそうだ。
アルシュファイド王国の未成年者とは、19歳までを言い、たとえ仕事を持っていても、決まった家がなければ保護対象なのだ。
「ユーカリノまで通うのは大変だが、ここに泊まれば宿と食事で金を使わなくていい」
そう言ってスティンは、次は士官学校に連れてきた。
「規則正しい生活だから、のんびりしたいならあまり合わない。それに騎士になるのが目的だから…まあ、こういうところもあるわけだ」
それから、王立技能学校へ行った。
「こちらもそれなりの規則はある。卒業する頃には様々な資格を得ているだろう」
そうして案内して回り、昼食を摂って、スティンは一旦尋ねた。
「どうだ、決められそうか?」
ユクトは言った。
「ユーカリノの伉儷に会ってみたい」
スティンはそうかと言って、また未成年者保護施設に戻った。
施設長は喜んで、候補の伉儷たちに連絡を取り、ユクトを一室へ連れていった。
「今日から行き先が決まるまで、ここがあなたの部屋よ。早く落ち着ける場所が見付かるといいわね」
そこは1人部屋で、黄みがかった白い壁に濃い色の寝台がひとつついている部屋だった。
そこへスティンが2人の騎士を連れてきて言った。
「彼らは街路警邏隊といって、レグノリア区の街路警邏をしている騎士だ。今日から行きたいところがあれば案内してもらうといい」
「ティル・グローナー」
「ジェン・ドナフィア」
名乗りながら、青い髪の少年と、赤い髪の少年が手を差し出して握手を求めた。
「ユクト・レノンツェです」
施設長が言った。
「明日早速、候補の伉儷が3組来るわ。朝に話を聞いて、昼からはゆっくり考えられるように、レグノリアを案内したらどうかしら」
そういうことに決まり、スティンたちは帰ってティルとジェンが残った。
「会わせたいやつがいるんだけど、今から火の宮に行かないか」
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