第1章 人気作家はつらいよ

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  時は平安・・・ 王朝文化華やかなりし頃。 悩める一人の女流作家がおりました。 数年前に、イケメンセレブやり放題ラブストーリーをこの世に送り出し、脚光を浴びた彼女。 時の権力者に見初められ、中宮である自分の娘の家庭教師になってくれと懇願されて宮中へ入った後も、そこで起こったあんなことやこんなことを題材に、次々と続編を執筆。 超長編の色男一代記を書き上げ、時の人となったのでありました。 彼女の名前は、紫式部。 もちろんペンネームです。 当時の女性は、父親の役職や夫の地位で呼ばれるのが一般的でした。 彼女は女房と呼ばれる女官の立場で、式部省の官僚だった父親の官位をつけて「藤式部」と名乗っていたのですが、藤が紫色だからか、物語の登場人物に紫のつく名の人がいたからか、後に紫式部と呼ばれるようになりました。 さて、世の中に一大センセーショナルを巻き起こした彼女でしたが、それから数年が経ち、ブームが落ち着いてくると、次第にこんな声が聞こえてくるようになりました。 「紫式部さん、新作はいつ出るのかしら」 「次はどんな物語かしら」 「違うタイプのイケメンを見てみたいわー」 そんな世間の声とは裏腹に、憂鬱な毎日を送る紫式部さん。 その日常をちょっと覗いてみましょう。
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