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そんな色っぽいシチュエーション、とっくに縁がありませんけどね。
式部は舌を出した。
女も年を取るとつまらない。
もっとも、私みたいに文学に秀でた女に文を送るような勇気のある男もいやしなかったけれど。
むしろ、代わりに和歌を詠んでくれだの、彼女に送る前に批評してくれだの、そんな依頼は掃いて捨てるほどあった。
その都度、季語の間違いや表現のやぼったさに赤墨を入れてやり、突っ返してやったものだ。
だからこそ、私にはあの妄想の塊のような、超長編を書くことができたのだろうなぁ。
あんな、見目麗しく、心根の優れた公達は、現実にいやしないもの…
物思いにふけりながら見上げた月は、いつもより大きく、明るくて、ふと、昔大好きだった物語を思い出した。
「あの、お月様!まるでかぐや姫が天に昇って行くときの月のようじゃない?」
式部が子供の頃に夢中になった、竹取物語。
竹の中から生まれたお姫様は、大きくなると月の光をまとっているかのように光り輝き、部屋の中を明るく照らすほどだったので、かぐや姫と名付けられたの。
自然に体が輝くって、いったいどんな感じなのかしら?
幼いころから不思議で、そんな特別な存在になりたくて、満月になると外へ出て月の光を浴びたものだ。
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