第1章 人気作家はつらいよ

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大人になって、自分で物語を考えた時、主人公の若者は、誰から見ても光り輝くような特別な男性にしようと決めた。 自分の魅力を知っていて、自信家で、だけど憎めなくて。 出会った女性は誰でも虜にしてしまう、究極のイケメン。 その名も、光源氏。 式部の中で、光源氏のモデルはかぐや姫だった。 求婚してきた名家の公達に、無理難題をふっかけて薙ぎ払い、最後に現れた究極のセレブである、時の帝までもをあっさりとふる、その女っぷり。 当時の常識からは考えられない破天荒な主人公が、なぜこうも長い間支持され、語り継がれてきたのだろうか。 実はかぐや姫は月の住人で、月から迎えが来たときに、なぜ地上に来たのか、なぜ帰らなければならないのか、その理由が明かされるのだが、それが明確ではない。 月の使者が言うには、姫は罪を犯したので地上に落とされた。 竹取の翁は、少し良いことをしたので姫を養育することでお金持ちにしてやった。 地上で20数年を過ごしたことで姫の罪は消えたので、迎えに来た。 まって、まって。 姫が犯した罪ってなに? 翁の善行ってどんなこと? 読者の疑問は置き去りのまま。 姫は「穢れたものを食べたせいで穢れた体を浄化するための薬」を舐めさせられ、 最後に帝にお別れの手紙を書く。 それを帝の従者に託し、不死の薬と一緒に渡すと、天の羽衣を着せ掛けられてしまう。 これを着ると全ての憂いはなくなるとあるが、要するに地上での記憶も翁たちと過ごした年月も、すべて忘れてしまうので、姫はぎりぎりまで着るのを拒んだのだった。
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