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あら?
姫はもしかして、帝の事を憎からず想っていたのかしら?
不死の薬って何なの?
天上の人々が全員不死なら、なぜ前世の因縁などというものがあるの?
羽衣を着たかぐや姫は、すぐさますべてを忘れ、迎えの車に乗って、天へ昇ってしまう。
残された翁と媼は嘆き悲しみ、病を得るが、薬も飲まずに伏せってしまう。
帝もまた、届けられた手紙を読んで悲嘆し、添えられた不死の薬も飲まずに壺を添えて従者に渡し、「駿河の国にあるという、天に一番近い山」へ持って行くように命令する。
従者はその山の頂上へ昇り、かぐや姫の手紙と不死の薬の壺を並べて燃やし、それ以降、この山を「富士の山」と名付けた。
という所で、竹取物語は終わるのだ。
大人になって読み返すと、納得のいかないことばかりだ。
せっかくもらった薬を、天に一番近いところで燃やして、煙を届けたところで一体何になるのか。
私だったら、こんな終わり方にはしない。
私だったら…
式部はそこで、はっと思い立って、小机の前に座り直した。
私だったら、この物語をどう描くかしら?
この、紫式部ならば。
式部は、胸の内から熱いものがこみ上げてくるのを感じた。
「今夜は、長い夜になりそうね」
お気に入りの筆を持つと、墨を含ませた。
少しだけ考えてから真っ白な紙に書きはじめる。
『いまはむかし、たけとりのおきなといふものありけり』
まぁ書き出しは、これしかないわね。
名も知らぬ作者へのリスペクト。
そして、次の行は…
こうして、新説『竹取物語』は幕を開けた。
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