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「さらばだ! 虎黄炸裂――焔雷砲ッ!!」
黄金が吠える。天地が震える。
光は爆音と衝撃を伴い、遂に世界を蹂躙し飲み込む。
鼓膜を破り、網膜を潰し、五体の感覚すら消し飛ぶような、暴力的な白が奔った。
もはや何事が起きたのかすら、傍目には測りかねるほど。文字通りの驚天動地こそが、筆舌を超えて現出したのだ。
されども、挑むものはある。視界も音も命でさえも、蹂躙される光輝にすらも、立ち向かわんとする魂がある。
鳳凰は叫んだ。男は吠えた。肉も骨すらも爆ぜたとしても、誇り一つは突き立ててみせると、真っ向から挑みかかってみせた。
「――生きて、戦え! 生き抜くためにッ!!」
全ては、命を繋ぐために。
この身はここで果てたとしても、その先に続く命こそを、守り抜かんとするがため。
塗り潰されんとする無辜の命、それらを守り抜く正義の刃を。
何より血と魂を分けた、二人といない妹こそを、その身で守り通すために。
「兄様ぁぁぁっ!!」
絶叫が上がる。爆音が潰す。
痛みも嘆きも、悲しみの涙も、無為へと還す光が奔る。
情景を語るべき文字は、それそのものと諸共に、白紙のページへと溶けて消えた。
なればこそ、今宵の戦いは――兄の物語は、ここで終わりだ。
闇夜の激突と敗走は、妹の物語の序幕でしかない。
あるべき本筋は、この数時間の後――明くる日にこそ、幕を開ける。
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