第一章 運命と出会う(1)

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◆  もう少し粘れば、きっといける。  右によろめきかけた体を、足の踏ん張りでなんとかもたせる。  左に流れた重心を、たたらを踏みながらも支えんとする。  よいしょ、よいしょと声に出し、おぼつかぬ足取りで、右へ左へ。  腕にも足にも力が足らず、あちらこちらと揺れていた体は。 「あ、痛っ!?」  いよいよ壁にぶつかった末に、踏ん張りも及ばずばたんと倒れた。  幸い、大事には至らない。落とした陸上のハードルは、腕を挟むことなく地に散らばった。  それは幸いだったのだけれど、しかしそれはそれとして――痛い。  打ちつけてしまった肘と膝とが、ずきずきと疼いて仕方がない。  それでも立たねばならぬので、やれやれと内心で嘆息しながら、少年は両手で地面をつき。 「なんというか、相変わらずね」  まったくというため息の混ざった、少女の声を聞いた。  体操服姿とハーフパンツ。短い裾から覗くのは、すらりと伸びた白い脚。  セミロング・ヘアを運動のために、シュシュで縛った髪型が眩しい。  夏の逆光を背に浴びる、クラスメイトの女子――星野弓美(ほしのゆみ)に対して、少年は苦笑いで応じた。     
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