第一章 運命と出会う(1)

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◆  関東地方某県に栄える都市――緑原市。  近年急速に開発が進み、ビルが立ち並ぶようになった、市街の中心部に緑原高校はあった。  多くの生徒達で賑わう、昼休みの廊下を天満は進む。  着替えも昼食も当に済ませ、あとは自身の教室を目指し、次の授業を待つばかりになった頃だ。 「昨日なんか、すごい山火事あったんだって?」 「朝まで燃えてたみたいだけど、今どうだったかな」  その間、気になっていたのは、すれ違う者達の会話だった。  いわゆる関東山地と呼ばれる山で、大規模な火災が起きたというのは、朝のニュースで耳にしている。  名前にもある、関東地方で暮らしている天満にとっては、それなりに他人事とは思えない事件だ。 「おー高牙。さっきの片付けの時、星野と密談してたんだって?」 「その話はいいよ、もう」  からからと笑うクラスメイトの岡に、ややうんざりとした声音で返す。  帰る方向が同じだったこともあり、弓美とは割合仲良くしてきた。  しかしその手の付き合いに、下衆な勘ぐりを入れてくるのが、男子高校生というものだ。  付き合っているという事実もないのに、半ばカップル扱いされているのが、天満と彼女との現状ではあった。     
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