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そんな僕の顔を見て、彼女は僕より大きな手を、僕の頭へとぽんと置いた。
「なりたいんだって憧れを……なるんだっていう強い意志を、ずっと、忘れないでいればね」
同じものには、きっとなれない。
だけど人は望む限り、強く己が身を鍛えられる。
その望みを胸に生きていければ。忘れずに抱き続けていれば。
いつか人の意志と勇気は、獅子の心の輝きを放ち、夢を勝ち取る力へと変わる。
今にして思い返してみれば、きっと彼女は、僕に対して、そう言いたかったのだろう。
夢に向かって走っていけば、君はどこまでも行けるよ――と。
明るい笑顔で、そう言った彼女は、僕の頭を優しく撫でた。
その時の手のひらの温度は、強く気高い獅子の叫びと、同じく記憶へと刻み込まれた。
そして、あの日から――10年。
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