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「――来たれ、来たれ! 我が意、我が声を聞き届けよ!」
あの日から、何もかもが変わった。
小学生だった幼い僕は、高校生へと成長していた。
白いベッドを抜け出した僕は、いくらか長くなった足で、今は大地を掴めていた。
それでも、この瞬間だけは、僕は情けなく尻もちをついて、その様を見届けていたのだけれど。
「天の五星、地の星命! 五行を統べし獣の王よ! しからばその意、その声のもとに、天地動乱を鎮める力を!」
病室を出て、家に帰って、僕は街を出歩けるようになった。
だけど人の営みの地は、今は野生のジャングルよりも、恐るべき混沌に満ちあふれていた。
漫画の中にしかいなかったような、人とはまるで違う何者かがいる。
異形を纏い、凶器をかざして、襲いかかるモンスターが。
家を、ビルをも踏み荒らしながら、恐怖と絶望を振りまいていく、見上げるほどの大怪獣が。
ようやく手にした日常は、だけどこの日この瞬間に、全て台無しにされてしまった。
荒ぶる神の振りまく祟りが、人の営みを塗り潰していき、焼き尽くすかのような地獄だった。
「月詠の名のもと、流奈が命じる!」
それでも、一筋の光はあった。
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