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人の世を闇が覆うのならば、それを切り裂いていく光もまた、人の姿を成していた。
今すくみ上がる僕の前には、あの時とは違う、少女が一人。
あの時の彼女と同じくらい――されど僕が成長した今では、僕自身と並ぶようになった、そんな年の瀬にあった少女。
それでも彼女は怯むことなく、叫びと共にその手を掲げた。
眩い光を放つ刀は、彼女の意志そのものを受けて、光り輝いているようにも見えた。
「我が手に調和の輝きを! 顕現せよ――星獣丸ッ!!」
混迷の空を、剣が拓く。
迸る光が天へと昇り、撃ち抜くようにして暗雲を散らす。
星のまたたきが顔を出した、その瞬間にまた、大地が揺れた。
何倍にも膨れ上がった光が、アスファルトを一直線に撃ち抜き、天から降り注いだのだ。
「―――」
その時、目の当たりにしたものを、僕は生涯忘れない。
その時の胸の高鳴りを、忘れることはないのだろう。
光を受けて振り返る、剣の少女は美しかった。
現代日本とはまるで違う、不思議な装束に身を纏った、彼女の姿と瞳の光は、まさしく物語の世界の、ヒーローそのもののようにも見えた。
「それ、は……!」
だけど、僕の目を惹いたのは、そんな彼女の姿ではなく。
その彼方、その背後にこそ現れた、黒い巨大な影の方だ。
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