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「ぬぅ!」
「が……っ!」
さりとて、敵も尋常ではない。
伊達に金を纏ってはいない。
轟咆を上げる黄金巨人は、その闇すらも照らして飛ばし、反撃の刃を叩き込んだ。
背中にも目がついているのか――驚愕と共に銀武者が跳ねる。血を吐くような悲鳴と共に、山肌へと巨体が叩き込まれる。
ずぅんと響く地鳴りの音は、さながら地平の彼方ですらも、鳴動させるかのごとく。
ただ突き飛ばされただけ、ただ押し倒されただけのはずだ。しかしながらそれすらも、ビルにも及ぶ巨人であれば、地すべりすら起こす衝撃を招いた。
「かか! なるほどよくぞ戦い抜いた!」
大笑する。
もうもう立ち込める土煙の彼方で、黄金の光が高らかに笑う。
正確に言えば、その奥に構えた、大絡繰の手繰り手こそが、だ。
「さすがは伝承に名高き、五行を統べし獣の王! 侮りこそはしておらなんだが、よもやここまで滾らせるとは!」
無論、白銀武者の方も、やられ放題なわけではなかった。
既に闇夜の打ち合いは、開始から数時間にも及んでいる。緑の山肌の至る所が、禿げ上がった様を見渡したならば、それは一目瞭然であろう。
「されど及ばず! 仮にも王の名――『皇帝』を、等しく背負った我なればこそ、易々と討たれてはかなわぬというもの!」
しかしながら、それでもなお。
月光を受ける大将軍は、あまりにも高すぎる壁であった。
燦然煌めく地上の星は。夜天に日輪を輝かす威容は。
黄金に漆黒のラインを走らせた、天下無双の大巨人は、白銀武者の健闘すらも、跳ね除けるほどの難敵だったのだ。
「さぁて締めるぞ、獅子の王! 今こそ貴様の構える玉座、貰い受ける時が来た!」
黄金の武者がアギトを開く。
猛獣を思わせる牙と口が、煌々と熱の光を湛える。
今や黄金将軍の五体は、それそのものが太陽の具現だ。
人界に恵みをもたらす陽でなく、雨を煮やして食い扶持を枯らす、忌まわしき災いの焔だ。
月に照らされるまでもなく、自身が光を放つ巨人は、宵の暗黒をまばゆく掻き消し、昼の光を現してのけた。
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