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序章 獅子のさだめ
――運命の出会い、というものがある。
大なり小なり違いはあれど、人はきっと、誰しもが、人生を変えるような出会いに、一度は出くわすものなのだろう。
僕はそういう運命と、二回、出会うことになった。
あの日、目にした疾走を、今も強く覚えている。
ブラウン管のテレビの画面に、映っていたその光景は、今でも鮮明に思い出せる。
遠い異国の草原の、その只中にその姿はあった。
見たこともないほどの広大な大地に。地平線すら見渡せる景色に。
無限とも言える地平の中で、それは燦然と輝くような、力強い存在感を放っていた。
赤いたてがみ、金の腕。
眩い日差しと陽炎に、全身を煌めかせ疾駆するのは、サバンナを統べる百獣の王。
幼い頃にテレビの向こうで、駆け巡るライオンの姿は、その時の僕には、特に強く、鮮烈に胸に響いていた。
雄々しく叫びを上げる獣と、画面越しに出会ったこと――それが僕の、一度目の出会いだ。
「僕も大きくなったら、ライオンになれる?」
白い壁に、白いベッド。
テレビに映る大自然とは、まるきり違う人工の部屋で、僕はそう尋ねたことがある。
子供心に、かつての僕は、獅子の姿に憧れた。
強く、なりたかったのだ。
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