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自分も士官学校を出たばかりの十六歳ではあるが、十分子供じゃないか――アーサリンがそんな風に考えていると、格納庫の外から一人の女性が歩いてきた。
「あらあら、どうしたの? そっぴーちゃん」
アーサリンが声のしたほうを振り向くと、そこにいたのは軍服に身を包んだ二十代半ばと思われる優しそうな女性だった。
襟の階級章を見ると少佐である。おそらくこの女性がここの部隊長に違いない。
「少佐! “そっぴーちゃん”はやめて下さいっていつも言ってるじゃないですかぁ! 少佐がそんなんだからみんなが私のことをちっこいだの可愛いだのって馬鹿にするんです。だいたい私の名前はトマサなんですから、愛称なら普通は“トミー”か“タミー”でしょう」
なにかのマスコットキャラのような名前で呼ばれた少女が軍服姿の女性に向かって抗議する。
「えぇっ!? トマサ……それに“そっぴー”って……ま、まさか……」
少女がアーサリンのほうに向き直り、口の端をにやりと歪めて渾身のドヤ顔を作る。
「ふっふーん♪ その通り! 私がこの基地のAM整備長にして技術開発部主任、天才技術者の呼び声高いトマサ・ソッピースなのです!」
トマサがアーサリンの目の前で、“ビシィッ!”と音がしそうなほど鋭い動きでVサインを作る。
あまりの驚きに、アーサリンは自分の背中に電撃が走ったかのような衝撃を受けた。
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