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アネット・フォッカーはソファから身を起こすと、目の前のテーブルに置かれていたコーヒー入りのマグカップを持ってマルグリットを迎えた。
「どうでもいいけど博士はやめてよぉ。私、博士号なんて持ってないわよぉ? 私はあくまでただの技術屋なんだから」
「ふふ、その白衣を見ているとつい……な。それにこの計画が成功したあかつきには、貴女には我が国が誇るベルリン工科大学の博士号だけでなく爵位も贈られることになっている。もはやそう呼んでも差し支えなかろう?」
「そういうの、興味ないんだけどねぇ。私が興味あるのは自分の作品がどれだけ優秀かを世の中……特にノースアメリカの連中に知らしめることだけよぉ」
「ふむ……で、その“作品”はどこまで完成に近づいているんだ?」
「そうねえ……九割方は完成してるわ。あとは実験的に現場に投入してみて、細かい調整をするぐらいね」
「そうか……」
マルグリットが微笑を浮かべる。美しい花を思わせる可憐な容姿をしていながら、その笑みは獲物を狙う猫科猛獣の獰猛さを思わせるものだ。
「この新兵器が完成すれば、連合軍の連中など虫けら同然に蹴散らせる。欧州全土が我がゲルマニア帝国、そして皇帝陛下の足元にひれ伏す日も近いだろう」
「うふふ、楽しみねぇ」
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