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二十二世紀の初頭――人類は完全な核兵器廃絶を成し遂げた。脅しの道具にしか使えない核よりも実用的な大規模破壊兵器の研究が進み、核ミサイルの類はもはや時代遅れの単なる危険物として次々と解体されていったのだ。
かつてテロ国家と呼ばれた国々のほとんどが体制を自壊、もしくは大国との戦争に敗れたことで国家の統合が進んだのも大きな要因だった。
度重なる原発事故によって世論が動いたこともあり、エネルギー供給源としての原子力も徐々に廃止されていった。代替エネルギーの開発により、いずれは森林資源や化石燃料にも頼らないエコ社会が実現する――当時は誰もがそう思い込んでいたのだ。
しかし、残念ながらそうはならなかった。
世界の各国首脳にとって誤算だったのは、人口の爆発的な増加だった。食料の生産やエネルギーの供給が日に日に増大する人口に追いつかなくなり、二十三世紀には化石燃料の枯渇が世界中で深刻なレベルに達したのだ。
期待された代替エネルギーの開発も、どの国においても政府や企業の癒着、利権争いや内部構造の腐敗などで遅々として進まなかった。
各国は原子力発電のノウハウを棄ててしまったことを後悔したが、もはやそれを復活させることも不可能だった。
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